2009年4月24日金曜日

矢柳剛|6月個展打ち合わせ。



東京画廊+BTAPは今年の6月に作家・矢柳剛の個展を開催する予定です。矢柳剛は明快な輪郭線と鮮烈な極彩色、そして矢柳スタイルとも呼ばれる縞模様を斬新に画面に配置して作品を制作します。これまで国内外数多くの展覧会に出品し、油彩、版画、デザインなどの幅広い分野で国際的に活躍してきました。





2008年に北京のBTAPで岡本信治郎との連続個展を行いました。今回は東京画廊+BTAPでの2回目の個展となります。上写真は、BTAPで開催された連続個展「笑いの哲学(74 74)」の会場風景です。


先日、作家の矢柳さんが個展の打ち合わせで弊社を訪れました。矢柳さんは1933年北海道生まれの76歳。牧場主の長男として育った作家は、一度は薬剤師を目指して薬科大学に入学するも途中で中退し、画家としての道を歩み始めます。1957年にブラジルのサンパウロへと渡って以来、アフリカ、シンガポール、マニラ、香港、フランスと、世界各国を渡り歩き、各地域の美術動向を肌で感じながら、日本人作家としての基盤を築き上げてきました。原色を彩った鮮やかな版画作品には底知れないパワーが感じられ、それは世代を問わず鑑賞者の感性に響きます。


今回は個展で展示される予定のドローイング作品をお持ちいただきました。




1983年1月1日から12月31日までの365日間、毎日途絶えることなく描き続けたドローイングです。矢柳さんがひとつひとつ箱から取り出し、「これは●月●日だ、これは▼月▼日だ」と、作品を床一面に広げていきました。




矢柳さんは制作当時を振り返って、「毎日、一人でボクシングをするように描いていた」と言います。自分自身と闘いながら、苦しみながら制作してきた経歴があるからこそ、今の矢柳作品独特の世界観が確立されたのかもしれません。それぞれのドローイングには、その日起こった社会事件(たとえば田中角栄逮捕など)が活字で記されていたり、またそれらの出来事を思わせるイメージが描かれています。矢柳作品は人間社会を風刺するような一面もあり、それは作家が常に自然環境や社会動向に敏感であるからこそ作品に反映されているのです。

6月の個展ではこのドローイング作品のほかに、牧場で生活していた時代から保管している牛乳管を使ったインスタレーション作品を展示する予定です。展覧会情報については、会期直前にブログにてお伝えする予定です。平面作品、立体作品を織り交ぜた、極彩色とパワーあふれる矢柳ワールドをどうぞご期待下さい!

2009年4月16日木曜日

松浦浩之さんインタビュー


松浦浩之
さんのインタビューが「リキテックス」でおなじみのバニーコルアートさんのHPに掲載されています!

バニーコルアート
http://www.bonnycolart.co.jp/

2009年4月13日月曜日

4月11日(土)トークショー(吉田暁子×ジャクリーヌ・ベルント)が開催されました。

2009年4月11日(土)、東京画廊+BTAPにて作家・吉田暁子×ジャックリーヌ・ベルントの対談トークショーが開催されました。本日はその模様をレポートいたします。





ベルント氏は芸術学や日本のマンガ文化を専門に研究されており、今年の4月から京都精華大学マンガ学部の教授に就任します。二人は去年都内で開催された、東アジアの政治・社会をテーマとしたシンポジウムで知り合い、今回のトークショーが実現されました。ベルント氏は、「理論系の討議が行われるシンポジウムで、アーティストに出会うとは思ってもみなかった」と、非常に驚いてらっしゃいました。吉田は東アジアの美術や日本の絵画をテーマに制作活動を行っているので、こういったシンポジウムなどによく参加をして、日々勉強をしているそうです。




当日は20名ほどの来場者にお越しいただきました。弊社はあまり大きなスペースではないので、程よい人数構成だったと思います。

吉田暁子は日本画の構図に焦点をあて、制作を行っている作家です。西洋画とは違い、日本画は中心点が存在せず、画面の力点が拡散された構図が特徴的です。それは西洋化していない日本美術の唯一の伝統であると吉田は考えており、それを視覚的に認識することにできる作品をこれまで数多く発表してきました。
吉田はこのトークショーで現代美術全体の問題として、批評基準criteriaが欠如している点を指摘しました。それは一般的に、西洋という観念の中で日本美術を捉えているからであり、こういった状況の中で、日本の独自性、創造性の核心に迫ることは難しい、と論じました。吉田は日本絵画独自の特徴である「多視点性」というものを強い基準として制作することによって、日本の本来の独自性が表れるのではないか、と考えているそうです。

ということで、今回のトークショーはこの「基準」ということばがキーワードになりました。確かに現代美術において、明確な評価基準というものは存在しません。しかしこれは非常に難しい問題で、美術だけでなく、現代の文学、音楽においても基準というものは存在しないと私は考えます。






今回お客様としてご来場いただいた美術評論の峰村敏明さん(上写真)もおっしゃっていましたが、基準とは流れる時代の中に存在しているのであり、その時代を生き抜く私たちは、それを冷静に判断することはできないのかもしれません。(ちょうど泳ぐ魚が全体の池を見渡せないように・・・)ポスト・モダニズムを迎えてから半世紀が経過する現代において、その基準はますます見え難くなっています。

批評基準の欠如、、、このテーマに関しては、今回はあまり明確な答えが出されませんでした。しかしベルント氏が述べていたように、吉田暁子の取り組む「多視点で見る作品」は、美術本来の魅力を十分に備えているのかもしれません。それは近代西洋の経済主義によって生み出された商品としての美術ではなく、絵自体の力。コンセプトシートを頼らずに、絵を能動的に見ることによって感じることのできる、美術の不思議な面白さ、なのかもしれませんね~。うまくまとまらず、申し訳ございません・・・・。


ところで、ベルント氏は非常に明快で理論的な意見をバシバシ話してくださいました。見ていて非常に爽快でした。

ご来場いただきましたお客様、どうもありがとうございました。

2009年4月10日金曜日

明日4月11日(土)17時より、吉田暁子とジャクリーヌ・ベルント(美術評論)によるトークショーを開催いたします。

明日17時より、吉田暁子個展『視/夜(しや)_意義黎明』の関連イベントとして、吉田暁子とジャクリーヌ・ベルント(美術評論)によるトークショーを開催いたします。


本日トークショーに向けての打ち合わせを行いました。日本画や日本独自の芸術性に強固なアイディアを持つ吉田と、芸術社会学を専門とする美術評論家ベルント氏が、絵画、日本画、日本美をテーマに、討議を行う予定です。今日は、事前ミーティングだというのに、両者の議論は白熱し、本番さながらのヒートアップを見せていただきました。ベルント氏は、今期より京都精華大学マンガ学部教授に就任。日本のマンガやサブカルチャーだけではなく、日本の歴史や社会全体に精通している研究者で、日本の現代美術に対して、非常に理論的で明快な意見を述べられます。

皆様お誘い合わせのうえ、是非お越しくださいませ!




【イベント情報】
対談テーマ:「コンテンポラリー・日本、批評のリアリティについて」
出演:吉田暁子(作家)、ジャクリーヌ・ベルント(京都精華大学マンガ学部教授)
日時:2009年4月11日(土)|17:00~
場所:東京画廊+BTAP|東京


■吉田暁子
1970年、名古屋生まれ。1996年、多摩美術大学大学院修了。大学在学中、日本画の画壇、創画会(1994年)に入選を果たし、この年、唯一学生での入選画家として注目を浴びる。いくつかの賞入選を果たした後、卒業後は現代美術にその発表の場を移し、2001年、ロックフェラー財団のACC奨学金で渡米し、続いて2005年には文化庁海外芸術家派遣による奨学金を授与する。以降ニューヨークと日本を行き来し、作品制作・発表を行いつつ、2005年にはインドトリエンナーレに日本代表として出品、2006年に北京で中国人作家・日本人作家のグループ展のキュレーションを手がけるなど、国内外で作家活動を続けている。

■ジャクリーヌ・ベルント
1963年ドイツ・イエナ生まれ。1982~1990年ベルリン・フンボルト大学在籍(ジャパノロジー・美学/芸術学専攻)。1991年ベルリン・フンボルト大学から美学博士号取得。1991年4月以来、日本在住。1995年~2001年立命館大学産業社会学部助教授(芸術社会論担当)。2001年4月~横浜国立大学教育人間科学部助教授(メディア研究講座)。2005年前期ドイツ・ライプチッヒ大学日本学科でのドイツ学術交流会による客員教授。現在は京都精華大学マンガ学部で教授を務める。専門は芸術学、マンガなどの美学と比較文化論。
主な著書:『マン美研 マンガの美/学的な次元への接近』 醍醐書房 (2002年)『マンガの国ニッポンー日本の大衆文化・視覚文化の可能性』 佐藤和夫・水野邦彦訳 花伝社 (2007)

2009年4月掲載誌情報

Bi-Weekly ぴあ』/ぴあ株式会社発行4月2日発売/定価350円(税込)
-Catch! MOVIE
映画とアートは歴史を語る いま中国で何が起きているのか!?

中国人映画監督ジャ・ジャンクーと弊社ディレクターの対談が掲載されています。







2009年4月7日火曜日

アートフェア東京2009が盛況のうちに終了いたしました。

アートフェア東京2009にお越しいただいたお客様、どうもありがとうございました。本フェアは、来場者数が例年を超え、絶えず会場内は賑わっていました。弊社ブースにもたくさんのお客様にお立ち寄りいただき、盛況のうちに終えることができました。特にお昼の時間帯は、前方に進めないほど混雑していて、弊社スタッフもお客様の対応に始終追われている状態でした。




今回は金田勝一のサメの作品に食いついて見入るお客様が目立ちました。海外からお越しいただいた来場者もこの作品を下から、上から、横から、顔面スレスレで細部を眺めていました。実は金田さんのサメの作品は、北京に全長5メートルのものがあります。実際のF1レースと同寸のもので、迫力満点です。



そして松浦浩之さんの小作品Windy Bunny-USE YOUR EARS―も大変な人気で、今回も多数のお客様にご購入いただきました。(毎日見に来てくださるお客様もいらっしゃった程です。)バニーがちょこちょこ列を成して行進しているイメージで展示しましたが、この心くすぐる演出も、多少効果があったようです。




また北川宏人さんのブロンズ作品も多数のお客様からお問い合わせを受けました。本フェアに同じく参加していたYoshiaki Inoue Galleryさんも、北川さんのテラコッタの作品を展示していたので、皆さんの心に強く印象づいたのではないでしょうか? 本フェアでは北川宏人の初の試みでもある、ブロンズ作品を4点ほど展示いたしました。


ところで、弊社ディレクターの山本は、ブース内の仕事と並行して、フェア会場に常設されていたお茶室の運営にも携わっていました。なぜアートフェアにお茶室???と感じる方も多いと思います。ここで少し解説を・・・。


現代社会において、アートは美術館で見るもの、ギャラリーで見るものであり、実生活からは一線を画した状態で存在しています。しかし、室町~江戸時代の人々が狩野派などの装飾的な美術に傾倒したように、日本の美術はもともと現実社会の一部として存在したのであり、我々の生活に根ざして繁栄しました。今回のお茶室は、そういった本来の美術のあり方を示すかのようにフェア会場の片隅に設けられ、美術作品を鑑賞しながらお抹茶を楽しめるよう演出されていました。



床の間には狩野智宏さんが制作したガラスの作品が設置されていました。床から光を照らし、ガラスを通して美しい影が白い掛け軸に映し出されていました。実は狩野智宏さんは日本画・家狩野友信を曾祖父に持ち、代々伝わる狩野派の血を引き継いで活動されている方なんです。 お茶室の横には狩野派の作家によって作れられた屏風が設置され、過去と現在が対比する形で展示されていました。


作家の狩野智宏さんと、ディレクターの山本です。私もお茶室でお抹茶をいただきましたが、アートフェアで頂くお抹茶は、大混雑のフェア会場とは打って変わって、ほっとする一時を与えてくれます。

ご来場いただきましたお客様、誠にありがとうございました。重ねてお礼申し上げます。

2009年4月4日土曜日

アートフェア東京2009に出展しています。

昨日より、アートフェア東京2009が開催されています。東京画廊+BTAPはブース番号E14で出展しています。初日の会場風景写真をいくつかご紹介いたします。




浦上蒼穹堂さんとブースを共有するのが3回目となる本フェアでは、「方陣」をテーマに展示構成しています。方陣とは軍事隊形をさす言葉で、軍事単位を統率し拡散するシステムを意味します。また魔方陣ということばにも用いられるように、方陣とは別の世界とコミュニケーションするための鍵でもあります。今回は一人の表現者、もしくは1種類の古美術を、4点1組で展示しています。4点を対面させることによって、1点だけでは見えにくい美術の奥行が見えてくるのです。




また、今回はブース中央に出入り口を設け、古代から現代へと通過する門を演出いたしました。お客様はあまりこの時空の門を利用されていないようですが、この門をくぐると、一挙に別時代へと空間が変化するのです。この展示テーマについては、ブース内に貼られているポスターに記載しています。是非ご一読くださいませ。




またオープニングプレビューでは、弊社ディレクターの山本が開催に当たってのスピーチと、テープカットを行いました。右から2番目が若干緊張している山本です。




また後日、フェアの詳細をレポートしたいと思います。皆さんお時間ございましたら、お花見ついでに是非フェア会場までお越しください!