2009年6月25日木曜日

宋冬Song Dong アートサロン

再び、ニューヨークでの宋冬Song Dongの模様をお届けします。

China Institute主催で、MoMAの展覧会の担当キュレーターのSarah Suzuki氏と宋冬の対談が開催されました。会場はチェルシーにあるPace Wildenstein(宋冬を長年サポートしている北京公社(Beijing Commune)のLeng LinはPace Beijingの代表でもあり、弊社ディレクターの田畑とも親しくさせていただいています)。会場には、宋冬の「Edible Bonsai(食べられる盆栽)」が展示され、香しい作品に囲まれながら対談は進みました。

代表作「Touching my Father(父に触る)」のスライドの前で、左からSarah、宋冬、通訳さん。


Edible Bonsai, 2009(生ハム)とサロンにお越しのお客様たち。


Edible Bonsai, 2009(チキン)。


Edible Bonsai, 2009(チョコレート)。オードブルは生ハム、メインディッシュはローストチキン、デザートはチョコレートというコースになっています。(ベジタリアン用にピーマンだけの盆栽もあったのですが、スタッフが到着した時には既にお皿は空でした。)


トークが終わり、宋冬の「Please enjoy!」の言葉も待たず、みなさん一斉に作品へ。



宋冬からは「まず生ハムから始めて、順番に食べてくださいね。」という言葉があり、会場は笑いに包まれました。食べている画廊スタッフを見たSarahからは「Wow, you are so brave!」と言われてしまいましたが、どれもかなり美味でしたし、お腹を壊すこともありませんでした。


一夜限りの贅沢で美味しいアートサロンでした。東京・北京でもこのような楽しい企画を通して、お客様とアートが関われる場を作っていけたらと思っております。

2009年6月24日水曜日

Dia:Beacon & Storm King Art Center訪問

宋冬展の空き時間に、マンハッタンから車で2時間ほどの距離にあるDia:BeaconとStorm King Art Centerに行ってきました。NYへ来てから毎日お天気が悪かったのですが、前日までの雨がちなお天気が嘘のような晴天に恵まれ、快適なドライブができました。

まず、Dia:Beaconへ。(中は写真禁止なのですが、外観も撮り忘れてしまいました・・・。)
言わずと知れた、Dia Art Foundationが所蔵する現代美術のマスターピースを中心に展示しているスペースで、元々ナビスコのパッケージの印刷工場であった巨大な建物をリノベーションしています。北京798藝術区にある我が北京東京藝術工程(BTAP)も、1950年代に建てられた国営工場だった建物なのですが、広さはだいぶ違うものの、レンガの壁や自然光を取り入れる天窓の作りなどがとても似ていたので、展示方法など色々と勉強させていただきました。

たっぷりと作品を堪能した後、カフェで軽い昼食を取ってから、Storm King Art Centerへ。途中、道に迷ってしまいましたが、無事到着。平日にも関わらず、多くの人が自然とアートと晴天を楽しんでいて、スタッフも日々の室内での仕事とは正反対の環境を楽しませていただきました。


ここは、巨大な彫刻庭園です。美しすぎる敷地の中に、巨匠の大きな彫刻作品がリズミカルに点在しています。広すぎるので、無料トラムも走っています。10m以上もある彫刻作品が小さく見える、そんな空間です。

我々が訪れた時には、Maya Linの展覧会をやっていました。見ておわかりのとおり、土地にかなり手を加えています。Maya Lin作品だけではなく、この広大な敷地のかなりの部分(作品だけでなく自然も)は、手をかけて人工的に作り上げられ、メンテナンスされているそうです。



画廊ではここまでのことはできませんが、ダイナミックで素晴らしいアートと自然を堪能でき、今後のお仕事へのパワーを充電できました。今後の東京画廊+BTAPの展覧会にもどうぞご期待ください!

2009年6月23日火曜日

ニューヨーク近代美術館(MoMA)「Projects 90: Song Dong」オープニング

いよいよ「Projects 90: Song Dong」のオープンです。
火曜日はMoMAの休館日。夕方、静まりかえったMoMA2階のAtriumに行くと、宋冬が一人インスタレーション風景を撮影をしていました。



宋冬とキュレーターさんと細かい最終チェックをした後、オープニングまでは中に居てはだめということなので、スタッフは屋外のバースペースへ。誰も居ないそよ風の心地よい静かなテラスで、極上の休息でした。



オープニングレセプションは18時からでしたが、開始前から続々と人が集まってきたので、少し早めにスタッフも展示スペースへ。



物音ひとつしなかった静かなスペースが、アッという間にものすごい人で埋め尽くされました。




「Waste Not /物尽其用」は、見る方の滞留時間がとても長い作品です。まず一目で圧倒されているようなリアクションの方が多く、そして展示しているものをよく見ると、どこの家にもあったようないわば単なるガラクタなので、「これは何なんだ?」というコメントを発する方が続出(アメリカは、思ったことをすぐに口に出す方が多いので興味深いですね)。それから、壁に展示されている3つのテキスト(作家、キュレーター、展示物の一つである石鹸について書かれた宋冬母のテキスト)のすべてをじっくり読んでいきます。読み終わると、今度はきれいにレイアウトされたものを一区画ごとにじっくりと見ながら、ゆっくりと作品の中を進んでいきます。見る人それぞれが、宋冬や宋冬のお母さんと似たような思い出を持っているようで、展示物を指さしながらお話をしている方も多かったです。



今回の展示にあたって、この作品を一緒に作ってきた美術史家の巫鸿(Wu Hung)氏と宋冬は、「宋冬というアーティストとWaste Notという作品の意味をきちんと目に見える形で丁寧に伝えなければならない。なぜなら、中国現代アートというのは、まだアメリカではきちんと理解されていないからだ。一部のミリオンダラーもするような作品ばかりが注目されているだけで、宋冬のような仕事をしているアーティストについて、きちんと語られたことがない。ただものを並べるだけでは、誤解を招く恐れがある」という心配をずっとしていて、「展示スペース内でどこまで文字で伝えるか」という点について、美術館側とかなり長い交渉をしてきました。




テキストの前は混雑します。MoMAののように入場者数が多い美術館は、人の流れが止まってしまうことで作品を見る環境が悪くなり、また作品に倒れこむなどして展示物にダメージを与えてしまうことなどを恐れていたのですが、やはり、作品についてのテキストを展示したのはよかったと思います。作品のスケール、色の美しさ、レイアウトの見事さ、そして何より心を打たれるのは、宋冬とお母さんの強いきずなです。一つ一つのものに、宋冬とお母さんの愛情があふれている。作品を見る人の多くがそのことを知り、とても感動しながら展示室を後にする様子が印象的でした。




なお、2005年から足掛け4年半、本作品のキュレーターであるWu Hung氏と東京画廊+BTAPとで一緒に温めてきた物尽其用Waste Notのカタログを、MoMA展のオープニングに合わせて、ようやく出版することができました。MoMAのブックストアでも、ポストカードやキーホルダーと並んで販売されています。




現在は英語版のみですが、かなり中身の濃い、読み物としても面白いカタログになっているかと思います。ご興味のある方は、画廊までお問い合わせください。銀座と北京798のギャラリーでも展示・販売しておりますので、ご来廊の際には、ぜひともお手に取ってご覧ください。

オープニングレセプションへの来場者は約1200人。来てくださった多くの皆様、本当にどうもありがとうございました。展覧会は9月7日までとなっておりますので、NYへお越しのご予定のある方は、ぜひともMoMAへ!


追記:本展の模様が、New York Timesの
Art Reviewに掲載されています。

追記2:ブログ内でご紹介しているカタログやグッズですが、こちらのサイトからもご購入していただけるようになりました。http://shop.toazo.com/tokyogallery/products/detail.php?product_id=351

2009年6月22日月曜日

宋冬Song Dong "Waste Not" @ MoMA|設営風景ビデオ

引き続き、宋冬展@MoMAの様子をご紹介します。

宋冬Song Dongの「物尽其用/Waste Not」が、何も無かった展示室に組み立てられていく様子を撮影したビデオが、MoMAのウェブサイトで公開されております。
3週間にわたる設営の様子を定点カメラで撮影したもので、今回の撮影を提案したMoMAのキュレーターさんもお気に入りの映像です。
ぜひともご覧ください。

次回は、オープニングの様子をお届けします。

2009年6月19日金曜日

ニューヨーク近代美術館『Projects 90: Song Dong』

宋冬のMoMAでの個展『Projects 90: Song Dong』作品設営の様子をご紹介します。実験的な作品を紹介するProjectsのシリーズの第90回目となる今回は、2005年に北京の東京画廊+BTAPで開催されて以降、各地を巡回している「Waste Not/物尽其用」が展示されます。


会場に着くと、展示はだいぶ進んでいました。思わずため息が出るほどの迫力です。今回、「Waste Not/物尽其用」が展示される場所は、エントランスを入ってすぐ上のAtriumで、美術館に来る人のほぼ100%が作品を目にする場所にあるため、作品が作られていく過程を多くの方が興味深そうに鑑賞していました。


11時頃、宋冬一家が展示室に登場。「昨日までは朝早くから夜遅くまで設営して疲れがたまっていたので、今日はゆっくりさせてもらいました」とのこと。早速、キュレーターと軽く打合せをし、お姉さん、奥さん、スタッフと一緒に設営作業開始です。「今日で設営を終わらせるよ」とのことですが、未整理の段ボールが散乱している状態でした。


中央は宋冬と宋冬夫人のYin Xiuzhen。奥さんも世界各国で作品を発表しているアーティストですが、今回は宋冬のアシストのために、一緒にNYに来ています。

ひたすら並べ、

考え、

並べ直して、


置き直して、

姪御さんに指導し、

姪御さんもひたすら並べ、

ひたすら並べます。これをひたすらクレイト50箱分繰り返して、作品は完成してゆきます。


設営の合間にプレスの対応もこなします。この日はアメリカ国内の中国系新聞社からの取材と、New York Timesのカメラマンが撮影に来てくださいました。

完成前にも関わらず、多くの方が作品にくぎ付けとなっていました。金曜日の夕方以降は無料開放ということもあり、美術館はかなり混雑していましたが、それを差し引いても、この作品が持つパワーの大きさを改めて実感することができました。立ったり座ったりの展示作業を繰り返す中、お客様からの質問がばんばん飛び交い、また設営している様子を熱心に撮影している人も目立ちます。設営中は柵を設けていましたが、オープニング以降は柵をはずして、作品の中をぐるっと回れるようになります。


上から見る作品は、また格別です。宋冬もかなりお気に入りのようです。MoMAへ行く機会のある方は、上からもお見逃しなく!


設置の最終仕上げの段階で確認をしながら、つい思い出話に花が咲きます。左から宋冬、宋冬の奥さん、宋冬のお姉さん。


最後の最後の仕上げの段階では、宋冬とYin Xiuzhenの二人だけが会場に残り、その後、無事に設営は終了したようです。展覧会のオープンは6月24日。9月7日まで開催しておりますので、夏休みにニューヨークへ行かれるご予定のある方は、ぜひともご覧ください。
本作品、「Waste Not/物尽其用」については、過去のブログもご参照ください。

2009年6月9日火曜日

東京画廊ビーガーデン|菜園を始めました。

東京画廊+BTAPはこのたび、菜園を始めました





少々突飛なご報告ですが、東京画廊ビーガーデン(Bee Garden)と名付けたこのプロジェクト。銀座3丁目紙パルプ会館屋上でミツバチを飼育しているNPO法人、銀座ミツバチプロジェクトさんからのお誘いで開始することになりました。


銀座ミツバチプロジェクトとは、ミツバチの飼育を通じて、銀座の環境と生態系を感じることを目的としており、現在銀座の複数の個人・団体サポーターの支援を募りながら、活動を推進しています。(プロジェクトの詳細については、以下のURLをご参照ください。http://www.gin-pachi.jp/ ) 現在、ミツバチは銀座三丁目紙パルプ会館の屋上で飼育されており、ミツバチたちは緑のある銀座郊外へと蜜を採取しにいくそうです。

銀座8丁目に位置する東京画廊は、浜離宮と紙パルプ会館のちょうど中間地点。桜の木が多く並ぶ浜離宮へと向かう蜂さんが、ちょっと一息つくお庭、ということで今回ビーガーデンという菜園名が名づけられました。




アグリクリエイトさんのアドバイスを得ながら、菜園設置の作業を行いました。土を耕す社長の山本です。土の中に空気を入れるように土を丁寧に混ぜ、野菜の育ち易い環境を整えます。



今回はアルギュラロケット、イタリアンパセリ、ジミナールデロピーマン、ジェノヴェーゼバジルなど、銀座という土地でも育ち易そうな野菜を植えています。先週の水曜日に種蒔きをして、今週、すでに芽を出しています。 ひょっこり芽を出したアルギュラロケットの写真です。アルギュラロケットといのは、ルッコラのことです。


収穫された野菜は、銀座内のレストランなどに提供しようと考えていおります。近い将来、弊社の展覧会オープニングのお料理にも、これらの野菜が使われるかもしれません。

今後も野菜たちの成長をこのブログでレポートしていきますので、どうぞご期待ください!

2009年6月6日土曜日

矢柳剛個展『一日一生、365日の痕跡 そして今』を開催しております。

現在、東京画廊+BTAPでは矢柳剛(Go Yayanagi)個展『一日一生、365日の痕跡 そして今』を開催しております。




先日もご紹介しましたが、矢柳剛は今年で76歳を迎える作家で、絵画・版画・彫刻・インスタレーションなど、幅広いジャンルにわたって制作活動を行っています。これまでブラジル、フランス、アフリカなど世界各国を渡り歩き、各地の自然環境、人間社会と対峙しながら、独特の作品世界を確立してきました。明快な輪郭と極彩色によって描かれた矢柳の作品は、アメリカのポップアートを彷彿させながらも、日本文化に受け継がれる平面的、漫画的描法が色濃く反映されています。マンガ文化がその一端を担っていると言っても過言ではない、日本の現代美術。矢柳剛の作品は、それら作品群の先駆けとして、1960年代から国際的に高い評価を得てきました。





今回は1983年に制作された365点のドローイング作品を壁一面を使って展示しています。同年の1月1日から12月31日まで、作家は一日も休まず描き続けました。日を追って一枚一枚を見ていくと、矢柳剛の心情の推移だけではなく、作家を取り巻く社会状況さえもが作品に反映されていることに驚かされます。それは矢柳が世界各地を遍歴するなかで、常に自然環境や各地の人間社会と向き合い、それを拒否することなく自身の創造活動に取り入れてきた事実を表しているのではないでしょうか。






オープニングレセプションは矢柳さんが故郷の十勝から仕入れた牛乳をお客様にお出しするという、異色のパーティーとなりましたが、先生のご友人にもたくさんお越しいただき、大盛況のうちに終了いたしました。





また本展に向けて、学生時代に服飾を専攻していた弊社のスタッフが、矢柳剛がデザインした布を使って、ワンピースを制作しました。「ファッションショーのように歩き回ってほしい」という作家さんのご希望もあり、オープニングではその衣装を身にまとった女性スタッフが、お客様に十勝の牛乳をお配りしました。矢柳剛と弊社スタッフのコラボレーションで、これまでにない印象的なオープニングとなりました。




お越しいただきましたお客様、ありがとうございました。本展は6月27日(土)まで開催しております。銀座にお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。

2009年6月4日木曜日

明日6月5日矢柳剛個展のオープニングレセプションを行います。

明日6月5日(金)より、矢柳剛個展『一日一生、365日の痕跡 そして今』が開催されます。



今週の水曜日から展示作業が行われ、さきほどようやく設置が終了いたしました。本展では1983年に制作されたドローイングのほか、牛乳管を使ったインスタレーションなど、さまざまな形式の作品を織り交ぜて展示します。自然・動物・人間などのイメージがせめぎ合うよう配置された大胆な構図。75歳という年齢を感じさせないパワー漲る作品の数々をぜひこの機会にご高覧下さい。




設置の作業を行う矢柳先生です。インスタレーションの準備をされていました。設置終了後、「このインスタレーションが今回一番いいよ!」と一言・・・・。必見です。


明日の18時からオープニングレセプションを行います。お時間がございましたら、お誘い合わせのうえ、是非お越しください!