2009年6月23日火曜日

ニューヨーク近代美術館(MoMA)「Projects 90: Song Dong」オープニング

いよいよ「Projects 90: Song Dong」のオープンです。
火曜日はMoMAの休館日。夕方、静まりかえったMoMA2階のAtriumに行くと、宋冬が一人インスタレーション風景を撮影をしていました。



宋冬とキュレーターさんと細かい最終チェックをした後、オープニングまでは中に居てはだめということなので、スタッフは屋外のバースペースへ。誰も居ないそよ風の心地よい静かなテラスで、極上の休息でした。



オープニングレセプションは18時からでしたが、開始前から続々と人が集まってきたので、少し早めにスタッフも展示スペースへ。



物音ひとつしなかった静かなスペースが、アッという間にものすごい人で埋め尽くされました。




「Waste Not /物尽其用」は、見る方の滞留時間がとても長い作品です。まず一目で圧倒されているようなリアクションの方が多く、そして展示しているものをよく見ると、どこの家にもあったようないわば単なるガラクタなので、「これは何なんだ?」というコメントを発する方が続出(アメリカは、思ったことをすぐに口に出す方が多いので興味深いですね)。それから、壁に展示されている3つのテキスト(作家、キュレーター、展示物の一つである石鹸について書かれた宋冬母のテキスト)のすべてをじっくり読んでいきます。読み終わると、今度はきれいにレイアウトされたものを一区画ごとにじっくりと見ながら、ゆっくりと作品の中を進んでいきます。見る人それぞれが、宋冬や宋冬のお母さんと似たような思い出を持っているようで、展示物を指さしながらお話をしている方も多かったです。



今回の展示にあたって、この作品を一緒に作ってきた美術史家の巫鸿(Wu Hung)氏と宋冬は、「宋冬というアーティストとWaste Notという作品の意味をきちんと目に見える形で丁寧に伝えなければならない。なぜなら、中国現代アートというのは、まだアメリカではきちんと理解されていないからだ。一部のミリオンダラーもするような作品ばかりが注目されているだけで、宋冬のような仕事をしているアーティストについて、きちんと語られたことがない。ただものを並べるだけでは、誤解を招く恐れがある」という心配をずっとしていて、「展示スペース内でどこまで文字で伝えるか」という点について、美術館側とかなり長い交渉をしてきました。




テキストの前は混雑します。MoMAののように入場者数が多い美術館は、人の流れが止まってしまうことで作品を見る環境が悪くなり、また作品に倒れこむなどして展示物にダメージを与えてしまうことなどを恐れていたのですが、やはり、作品についてのテキストを展示したのはよかったと思います。作品のスケール、色の美しさ、レイアウトの見事さ、そして何より心を打たれるのは、宋冬とお母さんの強いきずなです。一つ一つのものに、宋冬とお母さんの愛情があふれている。作品を見る人の多くがそのことを知り、とても感動しながら展示室を後にする様子が印象的でした。




なお、2005年から足掛け4年半、本作品のキュレーターであるWu Hung氏と東京画廊+BTAPとで一緒に温めてきた物尽其用Waste Notのカタログを、MoMA展のオープニングに合わせて、ようやく出版することができました。MoMAのブックストアでも、ポストカードやキーホルダーと並んで販売されています。




現在は英語版のみですが、かなり中身の濃い、読み物としても面白いカタログになっているかと思います。ご興味のある方は、画廊までお問い合わせください。銀座と北京798のギャラリーでも展示・販売しておりますので、ご来廊の際には、ぜひともお手に取ってご覧ください。

オープニングレセプションへの来場者は約1200人。来てくださった多くの皆様、本当にどうもありがとうございました。展覧会は9月7日までとなっておりますので、NYへお越しのご予定のある方は、ぜひともMoMAへ!


追記:本展の模様が、New York Timesの
Art Reviewに掲載されています。

追記2:ブログ内でご紹介しているカタログやグッズですが、こちらのサイトからもご購入していただけるようになりました。http://shop.toazo.com/tokyogallery/products/detail.php?product_id=351

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