2009年1月22日木曜日

2009年1月掲載誌情報 Vol.2



『SPUR』/集英社
3月1日発売号/定価700円(税込)

-アートなパフォーマンスは五感のごちそうだ!
 大巻伸嗣がインタビューに答えています。

中野北溟個展『津軽 / TSUGARU』

東京画廊+BTAPでは現在、書家中野北溟による個展「津軽 / TSUGARU」を1月31日(土)まで開催しております。


弊社は主に現代美術を扱いますが、1977年に『摩崖碑拓本展』、そして1987年に『比田井南谷展』と、これまで2回ほど書の展覧会を行っています。 「書」とは書くことで文字の美を表そうとする東洋の造形芸術であり、芸術の一分野として認識されています。一方で、同じ芸術というくくりでありながら、書と美術は全く違うジャンルとして明確に区別されています。 しかし、現代美術の歴史を振り返ると、全く互いに影響されずに発展した、という訳ではありません。


東京画廊+BTAPが1987年に個展を行った比田井南谷は、1959年にアメリカに渡り、新たな時代を迎えていた当時のアメリカの現代美術に大きな影響を与えています。比田井は文字を離れた抽象的な表現を追求し、「書く」という行為の一回性、そこにもたらされる時間という概念に着目した書家です。渡米後、ニューヨーク、サンフランシスコ、ワシントンで個展を開催する他、約20の大学で書道史を講演、欧米各地を転々としながら芸術家に書を指導するなど、書芸術の海外普及に全力を注ぎました。この活動はその頃全盛期だった抽象表現主義に多大な影響を及ぼし、「書」と「絵画」の交流として記憶されています。



今回の個展で扱う中野北溟の作品は、津軽の方言詩を書いたものです。中野北溟の書は比田井南谷に比べると「ことば」への強い執着が感じられ、書かれた字からは独特のリズムが奏でられています。また、麻色の和紙とそこに滲んだ墨の精妙な色合いが、穏やかで深みのある雰囲気を生み出しています。字の書かれていない狭い余白は不思議な存在感を示し、作品全体を眺めると、まるで抽象画を見ているような感覚にとらわれるのです。


書の展覧会では一般的に、作品を額に入れて展示を行いますが、本展では作品を壁に吊るし、むき出しの形で設置しています。作品と展示空間との境界線となる「額」を敢えて取り払うことで、書と空間との関係性が深まり、中野北溟の書の特徴である余白がより強く感じられるのではないでしょうか。

オープニング・レセプションでは青森県弘前市出身の書家、赤平泰処さんが津軽弁で朗読を行いました。インターネット・パソコンが情報を伝達する主流なツールとなった現代において、書かれた文字を見ただけでは、そこに潜在することばの意味・リズムを読み解くのは難しいのかもしれません。しかし実際に声に出して読まれた方言詩を耳にすると、和紙に書かれた一つ一つのことばが不思議な力を持ち、私たち鑑賞者に語りかけてくるようにも感じられました。


本展は1月31日(土)まで開催しておりますので、皆様ぜひご高覧ください。

佐々木博之

2009年1月20日火曜日

2009年1月掲載誌情報


『REAL NIKKEI Style』/日本経済新聞出版社
1月21日発売/定価940円(税込)出版社サイト

ここがスゴイぞ!日本の実力PART1
AKIBA世界に発信!進化する感覚のアート
アーティスト対談 松浦浩之 VS 北川宏人」

東京画廊+BTAPの作家、松浦浩之北川宏人が「オタク文化」をテーマにそれぞれの制作活動について語っています。




『月刊ギャラリー』/ギャラリーステーション
1月1日発売/定価840円(税込)出版社サイト

特集 アジアの美術都市 シリーズ1 北京798芸術区を歩く
「東京画廊+BTAP 798芸術区の「老舗」として」



東京画廊+BTAPの北京798芸術区での活動が紹介されています。

2009年1月19日月曜日

ART@AGNES2009 FINAL

東京画廊+BTAPは先日神楽坂で開催されました「ART@AGNES 2009FINAL」に参加しました。最終回を迎える今回のAGNESでは、大巻伸嗣、宮澤男爵、平良美樹の3名の作家を中心に出品しました。展示風景の写真とともにご紹介します。

ベッドルームの壁には、宮澤男爵のドローイング10点を展示しました。



昨年末の古林希望との二人展「消息 / comings and goings」以来、多数のアートフェアで出品をし、注目を集めています。作品は鉛筆で薄く細く描かれているため、一見白い紙のようにも見えますが、近づいてみると小さな丸や点によって人の形が浮かび上がるのが分かります。画面上のイメージが現われているようにも消失していくようにも見え、描線が繊細な緊張感を保っています。顔を作品の表面スレスレまで近づけて見入っているお客様もいらっしゃいましたが、中には作品の存在にすら気づかず、素通りされた方もいらっしゃるのではないかと思います。宮澤男爵の作品をお見かけの際は、ぜひ顔を近づけて細部までご覧下さい。



同じくベッドルームには大巻伸嗣の新作を設置しました。


レースのような半透明の布に花模様を彩った作品です。床面や壁面などを使って空間全体を変幻させる作品が多い同作家にとって、布を使用した作品は初の試みです。部屋に備え付けられていたソファとランプに掛けると、布の持つ柔らかさや軽さが際立ち、描かれた模様がさまざまな表情を見せます。1辺3メートルの大きな布は、室内全体に浸透していくような印象を受けます。ベッドの上にくしゃっと丸めたものも合わせて設置するなど、今回は実験的な展示となりました。

そして地下のフロアには、平良美樹の立体作品『狐女房』を展示しました。



地方に伝わる伝説・昔話をモチーフに制作を行う、書道専攻出身の若手作家です。高さ3メートルの巨大なドレスの生地には、稲荷神社に伝わる「狐女房」の伝説が12万字にわたって書かれています。

「狐女房」とは、端折ってご説明すると

「命を救ってくれた男に恩返しをしようと、女狐が美しい若い女に化けて嫁に行き、子供を授かる。しかしある日、子供に本来の自分の狐の姿を見られ、姿を暗ます。」


という話です。


室内の展示ではバスルームを「狐女房が帰る場所」と見立て、作家がインスタレーション作品を手がけました。会期中、狐の顔の形に切られたお札に「狐女房」の話を延々と書き、バスルームの壁一面に貼られていきました。


ご来場いただきましたお客様、どうもありがとうございました。

佐々木博之