さて、東京画廊+BTAPは、第二回目となる東京フォト2010に出展いたしました。昨年に引き続いての出展です。会場は六本木ヒルズ40階のアカデミーヒルズで、昨年の展示ホールとは違う雰囲気の展示となりました。東京画廊+BTAPのブースでは、NYを拠点に作品を制作している吉田茂規さん、イラン出身でベルリンを中心に作品を発表しているラハ・ラスティファードさん、同じくイラン出身でテヘランを中心に活動しているヌーシャ・タヴァコリアンさんの3作家さんの作品を展示しました。
吉田茂規さんは、2008年の個展で発表した「Identical Light」シリーズから6作品を展示しています。「写真は目に見えないものもとらえることができるのではないか」という発想から、光を撮っている作品です。光とは、実態のないものであり、何かに反射することによって始めて認識されるものですが、本シリーズでは、その光そのものが主役となります。活動の拠点としているNYでの毎日の生活の中で目にする建物や道に反射する、目には入ってくるが目に留まらない光を8x10のカメラで捉えています。作品の中の光が見る人の記憶に触れ、その人の心の中で何か形作ることを願いながら制作しています。シャッターを押す際は、ファインダーを覗いて撮るのではなく、胸のところに構えて撮影しています。作品に表れている優しい光は、ファインダーを通して見えたものを切り取っているのではないからこそかもしれません。
テヘラン在住のヌーシャ・タヴァコリアンさんは1981年生まれ。独学で写真を学んだ後、フォト・ジャーナリストとしてイランの現状を捉えた作品を多く発表し、国際的にも評価の高い作家さんです。今回展示しているのは「The Day I Became a Woman」シリーズから3作品。イランでは、女性は9歳になると一人前の女性として扱われるようになるそうで、Jashne Taklifという成人式のようなセレモニーが学校などでも行われるそうです。これをきっかけに、正式ににムスリム女性となり、毎日お祈りをし、チャドルをかぶり、男性と手をつなぐことを慎まなければならなくなります。作品には、この「イベント」にワクワクし、友達とはしゃぐ9歳の女の子が写っています。初めてのお祈り、初めてのチャドル、その姿をビデオカメラで撮るお母さんたち、どの写真からも、この日を祝福しているほほえましい様子が伝わってきます。しかし、それは同時に彼女たちが将来向き合うであろう、イラン女性が抱える問題も喚起させます。イランという国に対しては色々なイメージをお持ちだと思います。しかし、ペルシア時代からの長く豊かな文化的背景を持つイランという国を愛し、その姿を撮り続けている作家さんならではの視点で撮られた作品からは、現実に絶望したり、批判するような攻撃的な姿勢は見られないことは印象的だと思います。
ベルリンを拠点に制作活動を続けているラハ・ラスティファードさん。今回は「I & …」シリーズから2作品を展示しています。作品では、作家自身と彼女が影響を受けている人物(主にイランやヨーロッパの女性文学者)が重なり合っています。女性であること、豊かな歴史と遺産を受け継ぐイラン人であること、ヨーロッパに住んでいること、イスラム教徒であること。。。グローバルな現代美術という手法を通して、自分自身について、そして自身のルーツを問いながら、作品を制作しています。イスラムの世界で発達したのは抽象的、装飾的な美術表現ですが、西洋的な女性の肖像画を思い起こさせるようなその画面の構成は、イランで生まれながらも西洋文化の中で生活することを選んだ作家さんそのものと言えるかもしれません。外から見るイランと内から見るイランの関係性は他の国とはかなり異なると思いますが、またそれが多くのニュースとして報道されているのだと思いますが、作家さん自身が持つ内(影響を受けた人物)と外(アーティストとしての自分自身)の関係性とリンクするような印象もあり、とても興味深い作品です。
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