2009年2月13日金曜日

宋冬 Song Dong 「物尽其用/ Waste Not」 in Walsall

2009年2月12日~5月4日
“Re-Imaging Asia” @ The New Art Gallery, Walsall (UK)

運河の水も凍る寒さの中、2月12日にイギリス・Walsallで始まったグループ展「Re-Imaging Asia」のオープニングの様子ご紹介します。

Song Dongの「物尽其用/ Waste Not」は、美術館の一番広い展示スペース、Gallery 3に展示されています。9m x 15.5mの展示室に、お母様の思いの詰まった品々がぎっしりと並べられています。(椅子に腰かけているのはSong Dongのお姉さま。展示物はお姉さまが管理しており、彼女がいないと展示が一切進みません)。















エレベータを上がると、眼前に様々なモノが広がっています。びっくりするような量ですが、これでも輸送した荷物のごく一部で、開けていない木箱はまだまだたくさんあり、美術館の倉庫にも入りきらず、一部がエントランスに展示(?)されています。

北京の自宅には、さらに未整理のものがこれ以上にあるとのことで、いずれはこれらも整理した上で展示に加える予定のようです。

地元の方々をはじめとし、ロンドンやバーミンガムからも色々な方々が来てくださり、ひとつひとつ丁寧に鑑賞していました。

思わず「Wowww!!!」

レセプション会場にて、展覧会のキュレーターの一人であるShaheen MeraliとSong Dongとお姉様。

オープニングの前にSong Dongがひとつひとつについて語ってくれました。「これは父の靴です。いや違う、僕のだ。ボロボロになったから捨てたのを覚えてるんだけど、母が拾ってきてたんですね。」

「これは父が作った植木鉢です。父は何でも作りました。あのねずみ捕りとか。奥に展示しているのは、父と祖父が使っていた道具類です。」

「これは、僕が最初に使った鞄です。小学生の時だったと思います。懐かしいなー。」

「母が作ってくれたリュックサックです。これを作ってくれた頃はこのスタイルが流行ってたんですけど、うちはお金がなくて買えなかったんです。でも、母が服の端切れで作ってくれて。真ん中には自分で何かマークを描いたんです。そうすると市販のものに見えるかなって。もう消えちゃって見えないけど。」

「右のプロパンガスは、70年代のニクソン訪中前に、国から各家庭に支給されたものです。中国は貧しくないぞということを示したかったんですね。左のガスコンロは80年代に買ったものだと思います。」

「(上は)使ってない食器です。たぶん誰かからもらったものだと思います。母はこれは使わず、古い食器をずっと使っていました。新しいものは『子供たちの将来のために』ということでとっておいてくれたんです。こっちのホーローの食器は、父が若い頃から使っていたもので、僕も大学生の時にこれで食事をしていました。」

「2005年のBTAPでの展覧会の後に、母が体調を崩したんですけど、喉が渇くだろうからとペットボトルの飲料水をよく持って行きました。展覧会をするまでは、リサイクル業者に引き取ってもらっていたらしいんですが、「物尽其用/ Waste Not」が作品として評価されるにしたがって、母はこれも作品にしてしまいました。そういう意味では、他のものとは違う意味を持っていますね。僕にとっては、母の思いが詰まった、とても大切なものたちです。」

今回の設置にあたり、Song Dongは何も置いていない展示空間の中で、3日間レイアウトを熟考したそうです。Song Dong曰く「スペースが狭く(!?)全部展示できないから、かなり悩みました・・・。でも、どの角度から見ても素敵に展示できているでしょう?」2005年の北京、2006年の光州ビエンナーレ、2008年のベルリンとも全く違う、Walsallでしか見られない展示となっています。ロンドンからは電車で約2時間半、バーミンガムからは20分くらいということで、少々遠い場所ではありますが、美術館は電車の駅(Walsall駅)を降りてすぐなので、ロンドンからの日帰りもラクです。イギリス方面に行かれる方は、ぜひお見逃しなく!

「物尽其用/ Waste Not」は4月後半に、他の展示より先に撤収される予定で、その後ニューヨークのMoMAへと旅立ちます。MoMAでは、イギリスで展示されなかったもの、2005年の北京展では整理しきれていなかったものなども合わせてフル展示される予定です。なお、MoMAでの展覧会に向けて、4年越しのカタログプロジェクトも着々と進行中です。Song Dongのお母様を中心とした家族の思いと中国の激動の歴史が詰まったかなり濃い内容の本となります。こちらもぜひご期待ください。

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