2009年2月5日木曜日

中野北溟個展『津軽 / TSUGARU』 終了いたしました。

1月8日より開催しておりました中野北溟個展「津軽/TSUGARU」は、好評のうちに終了いたしました。ご来場いただきました皆様、どうもありがとうございました。








本展で販売したカタログの数は250部以上。会期中にこれだけの数を売り上げるのは、弊廊では極めて稀なことです。初日のオープニングレセプションは100人以上が常にスペース内にいる状態で、弊社の歴史に残るほどの高い人口密度を記録しました。

本展の「和紙をそのまま壁に吊るす」という展示方法は、やはり書壇関係のお客様にとっては衝撃的だったのかもしれません。書の展覧会では額縁に入れて展示を行うのが一般的であるため、会期中来場者の戸惑った表情を何度も拝見しました。
しかし一方で、「中野先生の作品を間近で、直に見られることができてよかった」という感想も多くいただきました。ガラス一枚とはいえ、額縁という隔てがあると、作品の持つ質感、紙・墨・筆によってもたらされる偶然性が、見る者に伝わりにくいのかもしれません。特に書の場合、文字の滲みや色調が鑑賞する上での一つの切り口となるため、作品をいわゆる生の状態で見ることは、理に適った鑑賞方法だと私は思います。

東京画廊+BTAPがこれまで扱ってきた書は、前衛書と区別される書家たちの作品です。したがって今回の中野北溟展も、現代美術における書と絵画の関連性を追求する流れで企画されました。しかし今考えてみると、中野北溟の書には前衛書には存在しなかった「ことばのちから」があるのではないかと私は思います。特に作品のテーマとなった津軽弁の方言詩は、津軽の日常を描いた他愛もない内容ですが、方言でしか表現しえない世界観や、自然や生命への愛情を強く感じさせます。

中野北溟の書は、筆勢のリズムと独特のフォルムによって、ことばひとつひとつに秘められた感情を体現しているように見えます。コンポジションやストロークなどの文字的形象性だけでは語ることのできない、ことばの感情を表す表現力が書芸術には潜在するのかもしれません。今後、書はアートという領域においてどのように発展・変化していくのか。「ことば」や「意味」が作品を考察する上で重要視されるようになれば、書は新たな表現手法として、現代美術と密接に結ぶ予感をも感じさせます。


ご来場いただきましたお客様、どうもありがとうございました。

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